2022-01-01から1年間の記事一覧

フーコーから見るラジオ体操の闇

まずはフランスの哲学者ミシェル・フーコーの『牢獄の誕生』の中の兵士の造形に触れたいと思います。 『十八世紀後半になると、兵士は造型されるものとなった。まるでパスタを練り上げるように、兵役不適格な身体を材料に必要な機械が造り出されたのである』…

仕事の意味

アルベール・カミュの『シーシュポスの神話』 ギリシア神話に登場するシーシュポスは、神からの罰でタルタロスで巨大な岩を山頂まで運ばされる。あと少しで山頂に達すると岩はその重みで底まで転がり落ちてしまう。シーシュポスはまた一から同じ作業を繰り返…

努力信仰

努力信仰が日本の精神に蔓延るようになったのは明治時代です。 明治政府を作ったのは薩長出身の武士たちで、彼らは都会の江戸っ子に負けてはならない、欧米に負けてはならない、その焦燥感、その圧力よって努力信仰が生じてきました。 江戸時代は努力信仰が…

マックス・ヴェーバーからみる金儲け

お金持ちになるのは、金銭欲の強い、お金に執着する人であるとは限らない、むしろ、お金への執着を離れ、ストイックに働いた人がお金持ちなったのだと、社会学の祖マックス・ヴェーバーは言います。 ヴェーバーは、キリスト教における、カトリックとプロテス…

ホッブズと対立するルソー

イギリス哲学者のトマス・ホッブズは、人間は支配者(国家)が存在しないと感情がむき出しになり、利己的な争い状態になる、これを自然状態とした。だからこそ、人間は支配者や(国家)を作り従うことで安全に暮らせると考えた。 ホッブズが社会契約説で書い…

ローマの共和政・ギリシアの民主政なぜ?

ローマもギリシアも小さな都市国家から始まり、ローマ人もギリシア人も部族集団であり、それほど差異はありませんでした。なぜ、ギリシアは民主政に向かい、ローマは共和政に向かったのか。 ローマでは「公」が重視され、ローマ人の部族集団では富裕層が貴族…

マルクス・アウレリウスってどんな人

ハドリアヌス帝はアントニヌス・ピウスを後継者に指名する条件として、マルクス・アンニウス・ウェルスとルキウス・ウェルスの二人をアントニヌスの養子にするのと、二人の権利も同等とすることとしたのです『マルクス・アンニウス・ウェルスは後のマルクス…

理性主義と経験主義

人間の認識には「理性主義」と「経験主義」と対立しあう二つの立場がありました。理性主義は、産まれた時からそなわっている、標準装備されている観念があることを言います。 観念は機能と考えるとわかりやすいです。 私たちの持っている観念は、大部分が見…

饗宴のディオティマってどんな人

人は何のために生きるのか。人は幸福のために生きるのだろうか。古代の哲学においては、幸福に生きるかどうかは選択の問題ではなかった。 人間が幸福に生きることは、人間が生まれながらにして持っている願望である。したがって、そこは問題ではない。問題は…

奴隷出身の哲学者エピクテトスとは

エピクテトスとは、古代ギリシャのストア派の奴隷出身の哲学者である。エピクテトスは、学者でもエリートでもない、奴隷としての出目、慢性的な肢体不自由といった多くの困難を抱えていた、解放奴隷出身の哲学者とは哲学史上でも珍しい人物である。 エピクテ…

セネカってどんな人

セネカはスペインの南部コルドゥバの裕福な騎士階級に生まれた。幼くしてローマに渡り、そこで当時の裕福な弟子と同様に政界に入るべく弁論の技術を学び、ストア派哲学者のアッタロスなどの哲学者にも教えを受けていた。 その頃の学習がセネカの美しい文章の…

エピクロスってどんな人

エピクロスは、古代ギリシャの哲学者でアカデメイアで哲学を学び、アテナイ市に哲学の学園を作り仲間たちと共同生活を送っていた。 古代ギリシャでは、奴隷民と自由民(市民)と厳密に分かれており、市民は自由民と呼ばれた人たちだけを指したが、エピクロス…

ストア派の倫理学とは

ストア派の倫理学はディオゲネスが唱えた「自然に従って生きよ」である。 自然に従って生きるとはどういうことなのか、これについてストア派は、人間の心の中で、何が善いとか悪いとか判断する理性を正しく働かせているのが最適の状態で、この状態のことを「…